02. 組み立て


フレームのパーツが全て揃ったところで「組み立て」の工程に入ります。ここからの工程は1台分づつの製作になるので、フレームパーツはきれいに1台分づつに並べられ、その順番を待っています。


治具を用いて複雑に加工された様々な長さや厚みをもつフレームパーツは、職人の手によって徐々に組みあがっていきますが、ここでも図面の類は見当たりません。それぞれのパーツがどの部位にくるのかを組み立ての手順と共にすべて職人の頭の中に入っているようで、その作業は素早くそして正確なものでした。


なかには複雑な形状を有するパーツもありますが、それには一つ一つ理由があり、多くは「強度を高めるため」なのだそうです。こうした工夫が高耐久なフレームの実現に繋がっています。この写真はフレーム本体の中心の「中骨」の形状ですが、 通常であればただの真っ直ぐな板であるところを、限られた見付け幅の中で板幅を稼ぎ強度を増すために、このような形状に加工しているのが分かります。


組み立て工程ではボンドを塗る作業が頻繁に行われますが、ボンドは貼り合わせる両面にはみ出るぐらいの量を惜しげもなべったりと塗られます。こうすることで接着面に隙間なくボンドを塗ることができ、接着がより確実なモノとなるそうです。こういった作業工程の一つ一つにも耐久性へのこだわりが見受けられます。


ボンドで貼り合わせた後、タッカーを打ち込んで確実に固定していきます。この画像でみてもかなり細かいピッチでタッカーを打ち込んでいるのが分かります。タッカーの針は接合する材の厚さなどで使い分けされるそうですが大中小の3サイズ、計7種類ほどあるそうです。


このタッカーの打ち込む本数は部位にもよりますが、基本的にかなり細かいピッチで大量に打ち込まれます。この辺はボンドと同じ考え方で、絶対に取れたり壊れたりすることがないようにと、材料や手間を惜しむことなく耐久性を高めるというこだわりのために確実に行われています。またこのタッカーを打つ作業、一見簡単そうに見えるのですが、かなりの重量があるタッカーのハンドガンを持って繊細にコントロールしながら、1台あたり数百本タッカーを素早く打ち込むのは想像以上に大変な作業なのだそうです。


背もたれ部分に合板が貼られ、徐々にソファの骨格が見えてきました。フレームは合板の他、厚みの異なる無垢材によって組まれています。無垢材も「硬くて強いビーチ材」と「柔軟で加工性が高いアルダー材」、「その中間の性質を持つメープル材」などを部位に応じて使い分けているそうです。最終的に見えないソファフレームの材料にここまでの高級木材を採用しているのは非常に珍しいです。


組み立てが完了したら余分なボンドなどをふき取り、ここからフレームの木材の角を落とすべく、サンダーで削って行きます。エッジを落としておくことで、このフレームの上に張られる次の素材(ウェービングテープやウレタンフォーム)の経年的な損傷を出来るだけ緩和させる為なのだそうです。また、次の工程の作業を行う職人にとっても手当りが優しくなり怪我が発生しにくくなるという事にもつながるそうです。


最後はペーパーを使って手で磨きながら、エッジの削り残しが無いか確認して行きます。


こちらはソファの「アーム」のフレームです。複雑なパーツ構成は本体同様ですね。そしてこちらもボンドがしっかりと塗られています。


アームやオットマンなど比較的小型サイズのフレームの組み立てはベテランの女性職人が担当されているとのこと。重たいタッカーのハンドガンを使いこなす様は隣の男性職人と遜色無く、むしろ経験が長い分、早くて正確で美しい仕上がり具合を見せて頂きました。


アームのフレームから出ている数本のボルト。通常、建築用途で使用するボルトを特注製作し、本体フレームとのジョイント用として使用しています。上の写真で見ると片側アームフレームに対しこのボルトが6本出ています。さすがにこの太さのボルト6本で接合すればまず壊れないだろうと容易に想像できます。このアームフレームと本体とのジョイントは先に「ウェービング貼り」の工程を行った後に行うことになります。